新自由主義的ヘゲモニーの危機という好機・中編ー禁断の二つのテーマの結合


(前回からつづく)

何やら時事ネタとしては日米貿易交渉で、中国が引き受けないアメリカの生産過剰なトウモロコシを安倍晋三様政権が全て引き受けてしまうそうで、左派・保守共に大騒ぎでのようです。しかし、安倍晋三総理大臣様は一億玉砕で自分らの失政を死なばもろとも国民全員で引き受けようとしているから仕方ありません。この道しかないでのです。(正確には民間セクター支援というかたちで引き受ける方向にもっていくようです)

グローバリストの泥舟はパシックオーシャンのど真ん中で引き換えせない状態なのです。


【戦後の置換効果】

さて、現在、私たちの社会の桎梏となる主流派経済学のモデルの人間像は、今だけ・カネだけ・自分だけの三だけ人間であることが、全体を活性化し社会全体国家全体を豊潤にするというイデオロギーと言って過言ではありません。最大多数の最大幸福です。

しかしながら、ウォール街の暴落からなる世界恐慌により、ひととき、グローバル化における自由奔放主義は危機的状況となり、各国が総力戦の戦時体制に入り国民が一丸となるため累進課税が導入したりして、それがそのまま戦後のヴレトンウッズ体制のもとで、「置換効果」となり引き継がれるわけです。

日本と西洋とは異なりますが、そのまま戦時中の終身雇用体制が残るなり、アメリカの都合で労働組合が結成されたりするなりして、日本的経営というものが一応は定着し、戦後の国民皆保険制度や二度と国民を飢えさせないという教訓から「種子法」などの食糧安全保障の体制も確立されるわけです。

日本的経営―その神話と現実 (中公新書 (724))
尾高 邦雄
中央公論社
売り上げランキング: 279,674

【死者蘇生を試みる】

日本だけでなくアメリカも60年代くらいまでは中間層が厚く豊かさを国民全体で享受していたわけですが、オイルショックを機にインフレなのに失業するというケインズ経済学を凋落せしめる経済危機が世界中に訪れるわけです。

グローバリズム・自由放任主義は死んだにもかかわらず、その死者を蘇生させることを考えていた主流派の経済学者の連中も当然いたわけで、その典型的な存在がかの有名なフリードリヒ・ハイエクなのです。

隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】
F.A. ハイエク
春秋社
売り上げランキング: 34,035

【思想修正・歴史解釈修正】

新自由主義は1945年7月にスイスのモンペルランでハイエクとフランク・ナイトが偶然出会ったことがきっかけで蘇生したと言われてますが彼らは、

世界大戦の要因はグローバル化でなくナチズムと共産主義ということにして、

この連中は思想によりヘゲモニー(合意による支配)再編成を試みたわけです。

植民地等で自給自足できる国はブロック経済体制に入ったために、資源が不足する日本やドイツ、イタリアがファシズム化し戦争が起こり、原因は自由貿易を拒んだため。

中学校でだいたいこう習ったと思いますし、今でもたぶんそうですがこれは完全に間違いです。逆で規制のない自由貿易と金本位制の緊縮財政が世界大戦に導いたわけです。

[新訳]大転換

[新訳]大転換

posted with amazlet at 19.08.26
カール・ポラニー
東洋経済新報社
売り上げランキング: 249,782

【元祖犬井ヒロシ・サバンナ高橋】

それまでは、自由主義とは奴隷、LGBTやらフェミニスト、働く女性、社会に参加したい障害者、部落差別などの解放というような自由も含んでいたわけですが、ハイエクは自由主義の「真の」性質を再認識する必要性を訴えており、それで完成した教義が

国家の権力最小化し個人の自由を最も重要な政治の目的として最大化

することだったのです。

” 社会において、一部の人が他も人によって強制されることができる限り少ない人間の状態 ”

といういかに最もらしい美辞麗句を並びたてたのです。

セクハラやパワハラだってそうだしこう言われると誰も反対できないのでが、この個人の自由ってあくまでも市場における競争的な個人の自由で、社会的弱者・少数派の自由とはまったく違うわけです。

見事に自由に対する解釈を変えて、後に成功するわけです。


【民主主義なんて廃止してしまえ】

このイデオロギー戦略におけるもう一つの展開は、「民主主義」を「自由主義」に従属させ、前者を意味づけ直すことであり、

” 民主主義は、本質的に手段であり、国内の平和と個人の自由を保障するための功利的な制度 ”

とハイエクは述べており、民主主義と自由の間に衝突があれば民主主義を犠牲にすると発言しており、晩年には

民主主義は廃止すべし

と極端な提起をしてました。
そうです。トルコの経済学者のダニ・ロドニックのグローバリズムのトリニティをハイエクは熟知していたのです。

国家主権
民主主義
自由貿易

これらのうちどれかを諦めなくてはならず、ハイエクは民主主義を邪魔であると即理解したようです。

まぁ、少数者支配(オリガーキー)でしか市場原理主義は貫けないわけで、庶民なんて同じ人間でも何でも無くただの家畜でしかなく、家畜は家畜らしく黙って屠殺されろってことでしょう。

中国がアメリカのように債務上限を議会に通す必要もなく、資本主義を理想的に展開できるのも民主主義でないからであり、資本主義そのものを考えれば最も効率よく運営している理想的な国なわけです。人権なんてそもそもないから戦車で轢くこともできちゃうし、これは善悪でなく単なる構造上における事実です。

日本もだんだんその傾向がつよくなってきてます。

 


【国内で敵をつくり勤労者を見方につけたサッチャー】

このハイエクの影響を受けたのがかの有名な英国の元首相鉄の女ことマーガレット・サッチャーであり、彼女はハイエクの本をバイブルのごとく手元に置いていたそうです。

彼女は自由主義の自由をフェミニストや労働者やらから引き離し、西ヨーロッパや日本と異なり冷戦構図ゆえに豊かさを享受できていたのと対照的に、かつての植民地のアメリカにより押さえつけられ、しかもオイルショックという経済危機もあり、一般庶民の不満が充満していたわけです。

恐らく労働者に不満・ルサンチマンが貯まっていたのでしょう。

そこでサッチャーは国家から保護された炭鉱労働組合を「内なる敵」と宣告し、一部の労働者の利益をフェミストと移民に配置し、失業するのは彼らのせいにして見事に労働者を見方につけることに成功したわけです。


【これ見覚えあるよね】

このやり方、どこかで見覚えがありますね。

そうです、小泉元総理や維新の連中のやり方といっしょというか、あっちのほうが先にやってたのです。

労働者が豊かにならないのは生活保護受給者がただ飯を食べているからだと解釈してしまっていることも同じなのです。数字でみるとなわけないのですが。

「米百俵おめでとう!痛みに耐えてがんばった!欲しがりません勝つまでは!」のスローガンにおどらされ、働けど働けどブラックな労働環境で低賃金のままという状況も、80年代に上から意図的に押し付けられたヘゲモニー(合意による支配)をバカ正直に信じていて、構造改革、逆進課税、規制緩和、グローバル化すれば自分らの生活がよくなると信じていたからなのだと思います。

サッチャーは労働者を義務とか英国の伝統主義と結びつけ「勤労者」と定義し、それに対して国家からの保護を受けている社会的弱者や既得権益者を自分らの税金で食ってる、

” 自分らの生活が苦しいのは失業するのはこいつらのせいだ! ”

と国内で同じ国民同士を対立させることに成功したのです。

今の日本における「社蓄」も同じく、

” 自分らはこんなにがんばっているのに、生活保護受給者やシングルマザーや障害者が税金で食ってるとかふざけるな! ”

と思っていることでしょう。

公務員や郵政や農協や生活保護受給者やLBGTやらの同じ日本人を敵にして、「身を切る改革」とか言って、勤労者というかブラック企業で精神的にボロボロになっている社蓄にルサンチマンを煽りまくるのも、ハイエクがヘゲモニー編成し直したものを、そのままグローバリストの為政者が、政治という舞台で実行に移したからです。


【売国奴に告ぐ】

アベノミクス第3の矢の「悪魔退治」のターゲットである同じ日本人で構成される団体の農協や医師会、漁業組合、つぶしも全て同じです。

 

>首相はまず、改革の例として今年、法人税率を2・4%引き下げたほか、数年で20%台に減らすことを明らかにし、「それは成長を助け、外資を呼び込むことになる」と強調。規制の撤廃のほか、エネルギーや農業、医療分野を外資に開放することを言明した。

成長戦略って外資を呼び込むことだったわけです。

外資呼び込むと三菱重工や川崎造船も潰され、自国で軍事開発できなくなる可能性も高くなるし、コマツのユンボ(パワーシャベル)も多国籍企業のキャタピラに速攻に国内シャアを食われてしまい、自国で国防もできないわ道路もつくらないわ、橋もつくれないわ、農作物も育てられなわとなり、これってただの売国行為でしかないわけです。普通に考えて。

中央政府が予算削ってPFIとかかっこいい言葉並べているけど、その正体ってただの共同体解体、国家解体でしかないのです。


【社会など存在しない。(国家も)】

さて、サッチャーは「権威主義的ポピュリズム」を展開したわけですけど、

①トーリー主義に共鳴するテーマ・・Nation、家族、義務、権威、道徳、規範、伝統主義
②新自由主義の挑戦的なテーマ・・個人主義、競争的個人主義、反国家主義

と本来なら両立できないテーマを結合させることに成功させたのです。

Prime minister Margaret Thatcher, talking to Women’s Own magazine, October 31 1987

“I think we’ve been through a period where too many people have been given to understand that if they have a problem, it’s the government’s job to cope with it. ‘I have a problem, I’ll get a grant.’ ‘I’m homeless, the government must house me.’ They’re casting their problem on society. And, you know, there is no such thing as society. There are individual men and women, and there are families. And no government can do anything except through people, and people must look to themselves first. It’s our duty to look after ourselves and then, also to look after our neighbour. People have got the entitlements too much in mind, without the obligations. There’s no such thing as entitlement, unless someone has first met an obligation.”

あまりにも多くの人たちが「もし問題があるなら、それを片付けるのが政府の仕事だ」という理解をしてきたというのが今のこの時代だと思います。「俺には問題がある。だから給付金をもらう。」「俺はホームレスだ。だから政府に家をもらう。」皆が自分の問題を社会に投げつけるのです。しかし社会というものはありません。個人だけが、男と女だけが、家族だけが存在するのです。政府といってもそれは人々を通してしか何かをできないのであり、その人々はまずは自分を頼りにするのが先決なのです。自分自身の面倒、そして隣人の面倒を見ることが義務なのです。人々は責任を無視して権利ばかりたくさん主張します。ですが最初に義務を果たさなければ権利などというものはないのです。


【一人でSMプレイできるサッチャー理論】

突っ込みどころ満載なのですが、そもそも義務と権利は債務者と債権者と同じで同じ主体に収めてはいけないのです。

そんなことすれば二律背反、ルソーパラドックスと同じく、自分の命を保護してもらうために命を捨てるというふうになります。

こんなの当たり前であり、権利は義務の概念はそれを主張するAとそれを果たすBという分離した別の者の存在がいて初めて成立する概念であり、嘘つきパラドックスも同様で、SMプレイは一人でできないのです。(何度でもいいます。これ大事ですので。ちなみに統合政府がデフォルトしないのもこのパターンを逆に利用しているからなのです。


【同胞とは】

生活保護受給者もシングルマザーもひいては年金受給者も納税とか保険料とか納めたからでなく、決して義務を果たしたからで無く、本来なら胞、同じ共同体の構成員、簡単に言えば国民、同じ日本人だから権利を享受できるわけです。

簡単にいえば、堤未果さんのいう「助け合い」とか「困った時はお互い様」ということなのです。

これは同じ言語を話し、同じようなものを食べ、同じような感覚をもっているだからできるのです。

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)
トクヴィル
岩波書店
売り上げランキング: 177,342

【日本のホシュ思想が形成されたわけ】

義務果たしたから権利を主張できるという考えは、投資に対して回収の概念と同じであり、インフラ整備も自分にリターンのない地方の道路とか、後の世代とかのために整備するとかバカらしくなり、そうなっているのが今の日本ということなのです。

後に説明するかもしれませんが、「常識」common sense 同じ人間という共通認識がそうさせるからであり、それを成し遂げるのが国民国家に他ならず、東北の震災とかあれば仲間意識から無条件に助けようとするし、TPP参加とか農協改革とか東北を苦しんでる被災地を同じ日本人を奈落の底に落とすようなことは本来なら絶対にできないはずです。

こうなったのもサッチャーが①トーリー主義に共鳴するテーマと②新自由主義の挑戦的なテーマの結合を成功させ、ハイエクのヘゲモニーの再編成を実行に移しイギリスのcommon sense「常識」として定着させて、これと同じヘゲモニーが日本にも伝染してきて見事にやられたからだと思います。

上からの影響、トップダウンにより。

新自由主義がグローバリズムがただの反国家主義とネトウヨさんが気づかないのも、市場での欲望による個人主義による競争が技術革新につながるとか、強い国家を形成するとかの思想のスリカエの影響を受けたからであり、これに義務とか伝統主義が介入して見事に「ホシュ思想が形成されたことを自覚していないからです。

これに中国・韓国・北朝鮮の歴史カード、領土問題が絡むともはや手をつけらえない次第であり、これって10代・20代までに中二病として「はしか」や「おたふく」のように患っていたのなら抗体ができるわけですが、団塊の世代が引退してから発病しているので、しかも彼らは数も多く時間も潤沢に有り余っているだけに非常に厄介なわけです。

現役中二病の団塊世代向けのそっち系の雑誌ばかりが書店に山積みされているけど、『雑誌 表現者クライテリオン』なんてまず置いてないのが現状で、それもそのはず少数派だと売れないからです。ネトウヨさん向けの商売ってかなり儲かるようです。

マーケティングにおいては反グローバル化・反緊縮は敗北しているのですが、しかし逆に少数派なので過去ログで紹介したよう「仕掛け」としては強みがあるのです。

月刊WiLL(ウィル)2019年10月号
ワック (2019-08-26)

 

.


(後編につづく)

国家にノーザンライトスープレックスをかけている馳浩なんていらないからもう政治家やめてくれと思われる方は ↓のリンクをクリックお願いします。


政治ランキング;

↑クリック


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA