終身雇用や年功序列の問題ーこれに新たに外国人労働者の存在が加わると


【収穫逓増の法則】

中野剛史さんの『富国と強兵』をゆっくり読んでるですけど、「日本的経営」について述べられている箇所があり、中野さんは「収穫逓増の法則」を導入することにより、経済合理性を理論的に説明していました。

簡単にいえば特に工業なんてそのシステムになれて、だんだん効率化がすすんで生産性が増すというもので、事務系でもなんでも慣れるまではぎこちないのですが、ある程度効率化が成されるというものです。

富国と強兵

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【尾高邦雄氏の日本的経営批判】

私は「日本的経営」が伝説化されていると、日本の産業社会学の泰斗である尾高邦雄先生の書物を通じて過去何度か指摘したわけですけど、この

日本的経営による長期雇用・終身雇用 VS アメリカ式の短気雇用・流動性の高い雇用

の対立構図の動画を何年か前に拝聴したことがありました。

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【終身雇用が善なのか】

その動画は「新BSディベート 終身雇用」というBSの番組なのですが、

終身雇用側の論客に森永卓郎さん VS アメリカ式の短気雇用・流動性の高い雇用側の論客に勝間和代さん

と対立構図を基調として議論し、そこに反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんが第三者としての立場としてその議論に加わるという、それぞれのプレゼンを通じて議論した質の高い内容の番組だと思います。

最終的にどちらかが優れているとかの結果がでるような内容ではないのですが、それぞれのメリットを主張し相手側のデメリットを指摘するとういう形で、最後に勝間さんも終身雇用にもメリットがあると認める場面も見られました。

長期雇用により大きなプロジェクトが成されるとか、そのメリットは享受しているようです。あと、長期安定雇用により住宅ローンなどを組めるとかもそうでしょう。


【震災需要頼みの製造業】

この番組の議論でデンマーク式のフレキシブルな雇用という第三の選択もあり、私個人としてはそっちのほうを日本も積極的に導入してはどうかと思います。

確かに長期雇用により生産性向上が見受けれれることもあるのですが、勝間さんが指摘するようなデメリットもかなりあり、政府が関与して存続させていい企業なのかどうかの判別は相当難しいと思われます。

公共事業と係わりの強い製造業に勤めていたことがあるのですが、その製造業は震災需要がなければそのまま縮小して外資に吸収されていたかもしれず、かなり政府のマクロの政策次第、頼みの企業だったと思います。


【今の中小企業の現状】

で、緊縮財政により利益確保できなくなった製造業のとる道は大体以下の二つだったと思います。

①ギリギリまで終身雇用を維持してそのうちに企業が耐えくれなくなり、55歳以上とか高給取りを退職金上乗せしてリストラする。
②人事考課制度などアメリカ式の管理システムの導入により社員一斉の昇給抑圧
③派遣労働者の雇用拡大


【年功序列という遺産】

①の終身雇用で昔の年功序列で給料が高くなりすぎた例って、結構勝間和代さんも彼女の書籍で指摘しているのですが、一般企業でPCで資料をつくれないし派遣労働者と同じ業務しかできない人が相当な高給を得て、その分のしわよせを若い・中堅社員にはねかえってくる場合があるのです。

利益確保しない公務員なら関係ないとよく言われますけど、公務員も5人に1人は非正規で対応するとかして、これは後に述べる③の派遣労働者の雇用拡大と似たところですけど。

人事もその昔ながらいるが業務内容は派遣労働者並みの仕事しかしない社員の給料を下げると、揚げ足とりの給料下げ競争になってしまい、その人事課長なり部長の人も給料と仕事量が比例していない人がいるわけで、ブーメランとなりやれない場合とかあると思います。

そのうち会社の業績が悪化して、銀行の追加融資の引き換えに銀行から出向してくる取締役の受け入れやら、追加融資条件としての大量リストラなどを断行することになるのです。

まぁ、これが年功序列と終身雇用のデメリット面だと追います。


【成果主義の弊害】

②の人事考課制度って、昇給とか賞与とかの原資が少ないから、成果主義によりその配分を変えるという意図が非常に強いと思われます。

しかしこの制度は個人的な意見ですが、結構日本の慣習ではなじまなく感じます。
実際、はっきり言って部署ごと成果を上げるために対立してしまい、社員どうしも「こんなことしても評価されない!」とか、「あいつがなんで昇給・昇格するんだ!」とかなり、社員どうし不和になり協力しなくなることとかあるのです。

会社内でしんどい内容の業務だけど必要であるが評価が低いことなんて誰もしなくなるのです。

昭和の理想主義者は「いや、君のその努力は見てる人は見てる!がんばれ!」とか言うわけですけど、まぁその努力が結実するかどうかは運です。

別の例をあげると部署ごとの対立なども生じます。
製造部だと棚卸しの額がその評価対象のひとつとなり、各部署がそれを削減したいために、半製品を決算期までに売れない製品まで製造してしまい、その完成品を最終部門の物流部門に流すとかそんなことをしだします。

半製品から完成品になると当然棚卸金額が増加して、黒字が出ていればいいのですが不況で赤字つづきの状況でこれやらえると、会社全体ではマイナスでしかないのですよね。古い部材なんて破棄するしかないから、賦課されて高い在庫金額になる前に早い段階で処分したほうがいいのです。

売れないとわかっている製品は、牛丼屋で例えるとずっとカウンターにいて注文しない客と同じく、この完成品は倉庫の場所はとるし、いずれ古くなりカセットテープのウォークマンみたいな存在となり売れなくなり破棄しかなくなり、その時に特別損失というかたちで完成品を破棄・費用計上して処理します。これを可能とできる時期、つまりは黒字になるまで待てということです。


【現場の悲哀】

だいたい倉庫の場所をとると業務が非効率的になるし、だけど不況時は残業代がつかないので部署によっては無償労働が増えるのです。

会社側は「売上落ちてるのに残業するのオカシイだろ?」てなるのですが、営業はどんな仕事でもとろうとするから、注文締め時間を過ぎても現場に負担かけるのです。

20円の部品の注文のために光熱費やら残業代の人件費やら負担するのです。営業側は「これが大きな注文につながる!」とか言うわけですけど、現場はたまったものじゃありません。無償労働がまってるし、家事をしている人だと家にかえって洗濯物取り入れたり、晩御飯をつくらないとかしなければならないのですから。

これやるくらいなら、半製品のままおいておいて、その半製品のまま破棄したほうが会社にとってはプラスなのですが、成果主義を導入すると各部署が個別に成績を上げようになり普通にこういった現象が起こります。(身体に例えると心臓のメンテばっかりして、脳のメンテを怠るとかして脳死に至るようなものです。いや同じ身体だし会社も同じです。)

そっちのほうが部長は出世して給料も賞与も退職金も上乗せされるのですが、会議で恒例の責任のなすりつけあいばかりするのです。

社長「なんでこんなに在庫金額が大きいだ!」
物流「営業がつくれと言ってるからだよ!」
営業「こんなにつくれと言ってない。必要なものだけと言ってるんだよ!すぐ製品よこせ!」
製造「すぐに製造できるわけないだろ!しかも必要なものだけつくれるわけないだろ。生産性が低いし部材注文のロッド数とか知ってるのか?」
資材「多く材料を注文しないと費用が増すし、大量注文しないといけない。」
経理「費用削減。残業停止。皆定時で帰宅するように。売り上げ低いからできるはず。」
社長「う~ん。もっと成果主義を導入して結果を出さないと。」

だいたい、こんな感じです。


【派遣って市場にとっては必要だけど社会にとっては必要なのかな】

③の派遣労働者の拡大はマクロでみると負の影響が大きく、やはり先行き不安の雇用の状況でどうやって結婚して子供つくって家を建てるのかとか、労働市場にとって深刻な問題となります。

社内でも社員と派遣とおなじスタッフであってもカーストのような意識が芽生えるし、派遣だとパートの直接雇用と異なりまた意識の分裂が激しい場合があるんですよね。

派遣スタッフだと仕事やめるときに直接その現場側に連絡をいれないで、「体調悪い」とか派遣会社に電話し、そのまま現場に行かなくても交渉は派遣会社を通じて行うことができて、自ら翌日から安易に消えることもできます
これは派遣スタッフ側のメリットだけど、雇用する側はそれまでの仕事を教えているし、とくに現場がまた仕事教えるのが大変で負担かかるんですよね。
人事は気軽に派遣スタッフを使うけど。

経済学ではこういう心理面が軽視されているし、人間は理不尽でかなり情に支配されているし、だからこういう精神面メンタル面とかが重要となってくると思われます。


【結論】

結論をいえば長期雇用とか短期とか会社によって合う合わないがあるし、ただ以前の日本的経営にそのまま時間を戻しても絶対にうまくいくわけないし、かと言ってアメリカ式の成果主義とか導入しても、特に中小企業あたりなんてむしろむちゃむちゃになっている例もあります。

第三の方法として今移民で大変になっているデンマークのようなフレキシブルな雇用システムの導入もあるわけですが、そもそも未曾有の新しいことをやることが苦手な日本にできるのかということだと思います。

何も成さぬものは歩みを止めた賢者でもあるのですが、西ヨーロッパの失敗を痛いほどみて、日本は「移管法改正」で雇用に関してまた新たな問題が上乗せされています。

森永さんと勝間さんとの議論をかわしているBS番組の状況とまったく異なり、更に大変になっているのです。

上の製造業の例も外国人労働者の存在を度外視した実例をあげてるので、今はもっと複雑でその問題は倍率ドン、さらに倍になっていることでしょう。
こんな仕事割りに合わないからこの時給ではしないとか、異文化の外国人労働者が言ったり、契約にこの仕事(清掃)は入っていないからしないとか、外国では常識的なことを当然発言するわけです。

これに関しては個人的な意見ですが、外国人労働者に分があると思います。資本主義における労働って、契約における労働力と賃金の交換ですから。


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